IPv6と光回線の関係とは?仕組みやメリット、導入手順まで徹底解説

2025/07/29 光回線

インターネットの通信速度や安定性を左右する要素のひとつが「接続方式」です。最近では、より快適なネット環境を実現するための次世代規格として「IPv6(アイピーブイシックス)」への切り替えが注目されています。従来のIPv4に比べて混雑が起きにくく、速度が安定しやすいのが特徴です。

本記事では、IPv6の仕組みやIPv4との違い、導入のメリット・デメリット、そして具体的な切り替え方法までをわかりやすく解説します。より快適なインターネット環境を求めている方は、ぜひ参考にしてください。

IPv6とは?インターネットの“住所不足”を解消する次世代の通信方式

私たちが普段インターネットを利用する際、データは世界中の端末を行き来しながら、正確に届けられています。その背景には「インターネットプロトコル(IP)」と呼ばれる、通信のルールが存在します。

IPの中でも、近年とくに注目を集めているのが「IPv6(アイピー・ブイ・シックス)」です。従来主流だった「IPv4」に代わる次世代の通信方式として開発され、インターネットの根幹に関わる大きな課題を解決するために誕生しました。

そもそも、パソコンやスマートフォンなどの端末には、それぞれ固有の「IPアドレス」が割り振られています。これは、郵便における“宛先住所”のようなもので、通信相手を正しく特定するために欠かせない情報です。

しかし、インターネットの急速な普及とともに、1人あたりが所有する端末の数が急増。IPv4で利用できるIPアドレスの数では、もはや世界中の端末をまかないきれない状況に陥っていました。

そこで登場したのがIPv6です。IPv6では、理論上ほぼ無限に近い数のIPアドレスが使えるため、IPアドレスの枯渇問題を根本的に解消できます。今後スマート家電やIoT機器がさらに普及していく中でも、安心してネットワークを拡張できる基盤となる技術なのです。

IPv6とIPv4の2つの違いについて解説

IPv4とIPv6の違いは「IPアドレスの数」と「通信方式」です。ここではそれぞれの要素について、詳しく解説します。

1.IPアドレスの数の違い

IPv4では、世界中で使えるIPアドレスの数が約43億個(2の32乗)に限られていました。43億個でも多く感じられるかもしれませんが、世界の人口が80億人を超え、1人が複数台のデバイスを持つのが当たり前ななかでは、すでに限界を迎えています。

これに対してIPv6では、なんと約340澗(かん)個(2の128乗)という膨大なIPアドレスが利用可能。これは340兆の1兆倍の1兆倍という“桁違い”のスケールです。これにより一人当たりが所有するデバイスが増え続ける未来でも、アドレスが足りなくなる心配はまずありません。

2.通信方式の違い

IPv4では「PPPoE方式」と呼ばれる接続方式が主流ですが、IPv6では「IPoE方式」と呼ばれる次世代型の通信方式が用いられます。それぞれの仕組みと違いを見ていきましょう。

①PPPoE方式──渋滞が起きやすい“従来型の接続”

PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)は、もともと電話回線で使われていた方式をインターネット接続にも応用したもので、現在も多くの光回線で利用されています。

この方式では、通信がいったんットワーク終端装置(※プロバイダー側にある中継用の通信機器)を経由する必要があります。そのため、利用者が集中する夜間などには“渋滞”が起きやすく、通信速度が低下する原因となります。

たとえるなら、幅の狭い道路に車が一斉に押し寄せて混雑してしまうようなイメージです。長年使われてきた安定した方式ではあるものの、速度や安定性の面ではやや不利です。

②IPoE方式──混雑を避ける“次世代型の接続”

IPoE(Internet Protocol over Ethernet)は、プロバイダーを通じてネットワーク終端装置を介さずに直接インターネットへ接続できるのが特長です。通信経路がシンプルなため、混雑の影響を受けにくく、帯域も広く取れるため、高速かつ安定した通信が可能になります。

たとえるなら、複数車線の広い高速道路をスムーズに走行するようなイメージです。

ただし注意点として、IPoE方式ではIPv6対応のWebサイトへの通信しかできないため、IPv4サイトへアクセスするには「IPv4 over IPv6」対応サービスが必要です。これは、IPv6回線を使いながらもIPv4の通信ができるようにする仕組みで、提供の有無は回線事業者によって異なるため、申し込み前に確認しておきましょう。

IPv6を利用するメリット・デメリットについて解説

ここでは、IPv6を利用するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

IPv6を利用するメリット

IPv6を利用する最大のメリットは通信の快適さが向上する点です。IPoE方式によるIPv6接続では、プロバイダー側のネットワーク終端装置を経由せずにインターネットへ直結できるため、回線の混雑が起こりにくく、通信速度も安定します。

とくに夜間や週末など、利用者が集中しやすい時間帯でもスムーズにインターネットを利用できるのは、大きなメリットといえるでしょう。

さらに、セキュリティ面の強化もIPv6の特長です。IPv4ではオプションだった暗号化プロトコル「IPsec」が、IPv6では標準機能として組み込まれており、通信内容の傍受や改ざんのリスクを大幅に抑えられます。

IPv6を利用するデメリット

IPv6を利用するには、いくつかの環境条件を満たす必要があります。

まず、IPv6とIPoEに対応したルーターやモデムが必要で、古い機器では非対応のケースもあるため、買い替えが必要になることもあります。

また、回線やプロバイダーの対応状況にも注意が必要です。IPv6に対応しているように見えても、IPoE方式や「IPv4 over IPv6」に未対応の場合、通信速度の改善は期待できません。

現在のインターネット環境はIPv4とIPv6が混在しています。IPv6だけでは一部のWebサイトにアクセスできないことがあるため、「IPv4 over IPv6」対応のサービスを利用して、IPv4通信もカバーする必要があります。これは、契約先の光回線サービスで対応状況を確認しましょう。

IPv6を利用するメリット・デメリットまとめ

ここではIPv6を利用するメリットやデメリットを紹介します。

項目 内容
メリット ・混雑の少ないIPoE方式で通信速度が安定
・夜間や週末でも快適に使える
・IPsecによるセキュリティ強化
デメリット ・対応ルーターやモデムが必要(古い機器はIPv6非対応)
・一部のIPv4サイトはそのままでは閲覧できない
(プロバイダーがIPoEやIPv4 over IPv6に対応している必要がある)

IPv6を利用するための4つのステップを紹介

IPv6を使った高速かつ安定したインターネット接続を実現するには、いくつかの準備が必要です。

とはいえ難しい手続きではありません。ポイントを押さえて順に進めていけば、スムーズにIPv6環境を整えられます。ここではIPv6導入のために押さえておきたい4つのステップを紹介します。

1. IPv6対応の光回線・プロバイダーを選ぶ

まずは、IPv6とIPoEに対応した光回線サービスおよびプロバイダーを選ぶ必要があります。

IPv6は比較的新しい通信方式のため、すべての通信事業者が対応しているわけではありません。サービスの公式サイトなどで、「IPv6」や「IPoE」に対応しているかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。

なお、全国エリアに対応した光回線サービス「イツキ光」でも、IPv6接続に対応しています。
詳細は以下のページでご確認ください。

 イツキ光 公式サイト|インターネットサービス詳細

2. IPv6対応のWi-Fiルーターを用意する

IPv6での接続を実現するには、対応するWi-Fiルーターやホームゲートウェイなどの通信機器も必要です。光回線やプロバイダーがIPv6対応であっても、手元の機器が非対応のままだと、接続方式は従来のIPv4になってしまい、通信速度や安定性の面でIPv6の恩恵を受けられません。

現在使用しているルーターがIPv6に対応しているかどうかは、メーカーの公式サイトや製品パッケージで確認できます。非対応の場合は、IPv6対応モデルへの買い替えを検討しましょう。

なお、光回線の契約時に設置される「ホームゲートウェイ」と呼ばれる機器も、IPv6対応である必要があります。ただし、ステップ1で紹介したようなIPv6/IPoE対応の光回線を契約していれば、通常はIPv6に対応した機器が提供されるため、特別な申請や準備は必要ありません。

このホームゲートウェイは、ひかり電話を利用する場合などにレンタル提供されることが多く、解約時には返却が必要です。

3. Wi-Fiルーターと機種の設定をする

IPv6対応の光回線への契約と、対応するWi-Fiルーターが準備できたら、接続設定に進みます。

Wi-Fiルーター側の設定方法はメーカーや機種によって異なりますが、基本的にはブラウザからルーターの管理画面にアクセスし、ガイドに沿って操作を行います。各メーカーの公式サイトには詳しい手順が掲載されているため、必ず確認しながら進めましょう。

ルーターの設定後、接続が安定していれば基本的に作業は完了です。

補足:パソコン側でIPv6を有効にする設定方法

古いパソコンや、以前の設定が引き継がれている環境では、IPv6が無効になっている場合があります。通信が不安定だったり、思ったように速度が出ない場合には、パソコン側のIPv6設定も確認しておきましょう。

【Windows 11の場合】

  1. スタートメニューから「コントロールパネル」を開く
  2. 「ネットワークの状態とタスクの表示」を選択
  3. 左メニューの「アダプターの設定の変更」をクリック
  4. 「イーサネット」や「Wi-Fi」を右クリックし「プロパティ」を開く
  5. 「インターネット プロトコル バージョン 6(TCP/IPv6)」にチェックが入っているか確認
  6. チェックが外れていればONにし、「OK」で保存

【Macの場合】

  1. Appleメニューから「システム設定(またはシステム環境設定)」を開く
  2. 「ネットワーク」を選び、使用中のネットワーク(Wi-FiやEthernet)をクリック
  3. 「詳細」→「TCP/IP」タブを開き、「IPv6の構成」が「自動」になっているか確認
  4. 手動設定になっている場合は「自動」に変更して保存

こうした設定を確認・調整することで、IPv6接続の効果をより確実に実感できます。

4. IPv6で接続できているかを確認する

IPv6対応の回線とルーターを導入したら、実際にIPv6で通信できているかをチェックしましょう。

おすすめなのは、Googleの「IPv6 接続性テスト」などのWebサービスです。アクセスするだけで、IPv6アドレスが取得できているか、自動で判定してくれます。

IPv6が有効になっていれば、通信速度や安定性の向上といったメリットを実感しやすくなります。念のため初期設定後には、このようなチェックを行っておくと安心です。

まとめ

IPv6は、IPアドレスの不足というインターネットの根本的な課題を解決する次世代規格です。
PPPoE方式と異なり、混雑を避けやすいIPoE方式での通信が可能になり、夜間や週末でも快適なネット環境を実現できます。

導入にはIPv6対応の回線や機器が必要ですが、手順を押さえればそれほど難しくはありません。ルーターやパソコン側の設定確認も含めて対応を進めれば、IPv6の恩恵を十分に受けられるはずです。今後も快適にネットを支える環境を整えるため、早めの切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。